謎のひやかし事務局長、酒井崇のインタビュー

酒井崇
酒井崇

今回は、gyakuのページにも登場する絵を描いていただいた酒井崇さんに、高円寺の某喫茶店でお話をうかがいました。酒井さんは長野県出身、多摩美術大学油画専攻卒業後の現在は、「まるで精力的に作家活動してる人みたいな感じ」に、お仕事で絵を描いたり、個展を開くなどされています。

gyaku: いつ頃から絵を描き始めたんですか?

酒井(S): 子供のころから絵は描いていましたが、本格的に勉強し始めたのは、高校を卒業してからでした。受験のために名古屋で美術の予備校に通って、そこではじめて基礎的なところから始めたんです。その後、東京の多摩美術大学で4年間勉強しました。

g: 大学で具体的には何を勉強していたんですか?

S: 大学では、試験を受けて、もう基礎があるっていう前提で入るので、デッサンなど基礎的なことは教えませんでした。入ってしまったら、放任主義でとにかく自分の好きなようにやりたいことができました。教授も教室には週に1−2回しかこないんです。たまにやって来て、「がんばっているか」っていう程度。

2006個展ポストカード

g: 酒井さんが描いている密画ってどういうものなのですか?

S: 基本的には、細い線で描いていきます。落書きみたいな気分で描いたものが、どんどん手を加えていってそのまま密画になるっていう感じかな。大学で版画だったりとか、キャンバスを描く時は、いくつか下書きをして「これが完成品です」というところに持っていくと思うんですけど、そうすると凄くかしこまってしまう。それが嫌なんです。下書き的な感じで描いて、欲張ってそれを作品にしてしまおうと。人によっては、それは作品じゃないと言うかもしれないけど。

g: 大学のときからこういう絵を描き始めたんですか?

S: その時は、完全に落書きです(笑)。講義の授業がつまらなかったんですよ。基本的には、授業っていうよりは、落書きが中心でした。そうやってアイディアとか考えて、それをちゃんとアトリエで絵にしたりとか。クロッキー帳とかに描いてあるのはあくまで下書きやアイディアノート、作るものは一応教授に見せるので、大きくてちゃんとしたものと、分けている感じがあまりした。でもだんだんそれが面倒くさくなってきて、段階を踏んで下書きがあって、ちゃんとしたものを描いて完成っていうところが、切り離されてしまって嫌なんです。 描いたものが良ければそれでいいと思うんですけど。

新宿駅
新宿駅

g: 中央線沿線を中心に駅の絵を描いていますよね。高円寺に引っ越してきて、これらの絵を描き始めたんですよね。

S: はい、最初に描いたのは高円寺です。高円寺に引っ越してきたとき、すごくときめいていたっていうか、何かできそうな気がしてたんです。今まで関わっていた学校の人たち以外に、積極的にPRしたいと思って。以前、この近くにポストカードを置いてくれる店があったので、何か手短にぱぱっと描いてポストカードを置かせてもらおうと思ったんです。そのために何描こうかなあと考えて、高円寺だから高円寺のものを描いたら評判上がるかな、と思って始めたんです。

g: 中央線シリーズはどのくらい描いているんですか?

S: もう18くらい。

g: 最初の高円寺と最近のものを比べると、スタイルがだんだん変わってきたように見えますが。

S: 一番最初に描いたものと最近描いたものとは4年の開きがあるんで、それを並べてみると、やっぱりその時々で違いが出てくる。基本的に、即興描きなんですよね。前に描いたのは別のものとして、また新しく一枚描き始めるので、その時々の影響が出てくるんです。

by酒井崇

g: 酒井さんの絵には、人物もたくさん登場していますよね。人物を描く時は、だれか実在のモデルになる人物がいるのですか?

S: 具体的に誰かを描くっていう場合もあるんです。そういう時は一応その人に似るようにって描きます。誰かっていうのがない場合は、完全に頭の中でつくって描いています。 もっと基礎的な勉強をしていたころに、モデルさんをそっくり忠実に描くということをよくやりました。僕が描くと、予備校の講師が、「君は何を描いてもみんな同じ顔になる。ぜんぜんモデルを見てない。」とよく注意されることがよくあったんです。見て描かなくちゃいけないときでも頭の中で勝手に作っちゃって描いちゃう癖があるみたいです。学校や、受験とか縛りがなくなっちゃったら、そういう面倒くさいこと省いちゃって、作って描いちゃうから。

コーヒー

g: 人物もそうですが、他にもカフェやコーヒー、コーヒーのミルなどが、よく出てきますよね。あれは何かこだわりがあるんですか?

S: 単純に、モノとして好きなんです。コーヒーって、コーヒーとそれを取り巻く何か、空間だったり、音楽だったり、凄くイメージが広がるものがあって。何か絵を描こうと思ってコーヒーを描いちゃうと、自然に周りの世界ができてくる。いい取っ掛かりになる。

g: 名刺の絵も。

S: コーヒーをストローで飲んでる(笑)。(ページ一番上の絵)

g: 建物も特徴がありますね。

S: 泥くさい、古くさい感じものが好きなんですよ。もともと育ちが田舎で、古くさい感じのものが身近にあったんで、それが自分の中で根底にあってそれが滲み出てくるんです。

g: 誰か影響を受けた人はいますか?

S: 本当に無知のまま始めたんですよね。誰でも知っているような作家を全然知らなくて。ダリすら知らなかったんですよ。それで、予備校の先生に、画集をいろいろ貸してもらって見ていた時に、「これ、すごいかっこいい」とおもったのがダリでした。そっからしばらく、ダリの様に描きたいと思ったことがありました。きれいで上手いなっていうのが好きですね。人の手でどうやって描いたんだろうって思いました。なのでダリに一番影響受けてると思います。

g: 今は、平日は何か他のお仕事をしているんですか?

S: グラフィックデザインの仕事をしています。まだ入りたてなんで修行と見習です。

g: それとは別に絵を描いているんですか?

S: そうですね。あくまで自分の中では絵が根本だと思っています。(GDは)生活のための職業としてやっています。

gyakuロゴから

g: これからはどんなことをしたいですか?

S: 最終的には自営業をやりたいんです。最終的に自分でお金ためて、それでお店を持つ。具体的には喫茶店をやりたいんですけど、ただ喫茶店じゃなくて、別に立派な絵じゃなくて、本当に自分が気に入ったものとか並べて...そんな感じのをやりたいですね。「それは酒井君にしかできないね」っていう面白いもにしたいです。そして、その過程を大事にしたい。カフェってお金があれば、優秀なスタッフを雇って、業者さんにおしゃれにインテリアなどをやってもらって、おしゃれな絵を買ってきたりすれば、誰でもできますよね。でも、そうじゃなくて、自分が生きてきた集大成のような面白いものを作りたいです。

酒井崇大ひやかしホームページ